2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震により、石川県七尾市田鶴浜地区では、多くの歴史ある建物が解体を余儀なくされました。地域の記憶や風景を形づくってきた建物群が失われていく中で、私たちは改めて、地域文化をいかに継承していくのかを問われています。
そのような状況の中、地域出身の宮大工・柴田真次が明治25年に手がけたと伝えられる庄屋宅が残されていました。寺院建築を主とした宮大工が手がけた数少ない民家の一つであり、紅殻塗りの柱や、建具のまち・田鶴浜の手仕事の痕跡が随所に残るこの建物は、当時の生活文化と空気感を今に伝える貴重な歴史遺産であることが、地域住民および専門家によって確認されています。
当初、この建物も公費解体の対象とされていました。しかし、「この家を地域で残したい」という声が徐々に広がり、2024年11月に設立された「たつるはま未来会議」の呼びかけにより、所有者から保存・活用を前提とした寄付のお申し出をいただくに至りました。
私たちが守ろうとしているのは、単なる建物ではありません。この家を残したいと願った人々のつながり、そして突然の災害に直面しながらも、過去に学び、未来を構想しようとする地域の意思そのものです。
この間、「たつるはま未来会議」では、2025年6月から9月にかけてクラウドファンディング「建具のチカラで町づくり!歴史と文化を継いで」を実施し、全国から多くのご支援をいただきました。これにより、藤澤邸の保存・活用に向けた初期的な事業費を確保するとともに、立命館大学等との連携による実践的研究も進められることとなっています。
そこで私たちは、所有者からの土地・建物の寄付を受け入れ、持続的かつ公共性の高い形で管理・運営を行うため、新たに一般財団法人を設立することといたしました。本財団は、柴田真次が手がけた貴重な古民家をはじめとする地域の歴史的・文化的資産の保存および活用を通じて、地域文化の継承、災害からの復興に資するコミュニティの再生、学術研究および人材育成の推進に寄与することを目的とします。
また、本財団が拠点とする田鶴浜町西町地区には、災害公営住宅の整備が予定されています。これを契機として、田鶴浜地区地域づくり協議会による各部会の活動と連携・協力を図りつつ、建物のみならず周辺環境も含めた空間活用を進め、共同農園や庭園づくりなどを通じた地域交流の場として整備していくことを構想しています。
過去の災害復興の研究においては、災害発生から2年から3年を経た後に「復興感の二番底」に直面することが指摘されています。抑えていた不安や後悔の念による心身の不調、また生活環境の変化がもたらす社会的孤立を少しでも回避するため、本財団の設立準備にあたっては、新潟県中越地震後に小千谷市塩谷集落で20年にわたり活用されてきた「芒種庵」や、富山県南砺市井波地区の「ジソウラボ」など、地域に根ざした持続可能な運営モデルを現地で学んできました。
本財団は、過去の継承と未来の創造をつなぐ拠点として、地域内外の多様な主体との協働により、地域づくりにおいて不可欠な社会的資源の調達・活用・創出に取り組んでまいります。田鶴浜の貴重な歴史的・文化遺産を次世代へと確実に引き継いでいくことをここに誓い、本財団の設立の趣旨といたします。
2026年5月19日 たつるはま地域文化財団
設立準備委員会
2024年の地震により、田鶴浜地区では多くの歴史的建物が失われました。 その中で残された藤澤邸は、明治期の庄屋宅としての風格を備え、宮大工の技と建具のまちの手仕事の痕跡を今に伝える、極めて貴重な文化資産です。しかし、本プロジェクトの意義は単なる建物の保存にとどまりません。 この家を残したいという地域の声の重なり、そして災害を契機に立ち上がった人々の関係性そのものが、これからの地域づくりの基盤であると私たちは考えています。
藤澤邸を、過去の記憶を継承しながら新たな関係性を生み出す「地域文化の実験的拠点」 かつ「人が再訪し続ける関係性の拠点」として位置づけます。
(1)継承する
歴史的建造物としての価値を尊重し、適切な修復・保存を行うとともに、建具や意匠、暮らしの知恵を次世代へと伝えます。
→「建具のまち・田鶴浜」の文化を体感できる場
(2)ひらく
地域住民の日常的な交流の場として開放するとともに、外部からの来訪者や研究者、学生を受け入れ、「開かれた文化資源」として活用します。
→地域内外をつなぐ接点の創出
(3)つくる
災害復興の過程にある地域において、新たなコミュニティのあり方や文化継承の方法を試行する場とします。ワークショップや共同作業、実践的研究を通じて、「これからの地域」を共に構想します。
→復興のプロセスを創造的な営みに転換
地域サロン・交流拠点(定期的な開放日)
建具・木工など手仕事のワークショップ
学生・研究者によるフィールドワーク拠点
災害復興や地域づくりに関する実践的研究
小規模な展示・公開・文化イベント
また、敷地の一部を活用し、共同農園や庭づくりなどを通じて、日常的な関係性の再構築を図ります。
一部の人の所有物ではなく、ひらかれた公共的空間として運営
地域住民・専門家・学生など多様な主体の参画
無理のない段階的な活用による持続可能な運営
また、他地域における長期的な実践事例も参照しながら、地域に根ざした運営モデルを構築します。
藤澤邸を、単なる「保存された建物」ではなく、人が関わり続けることで価値が更新される 「生きた文化資産」として位置づけます。地域の人々にとっては「もう一つの居場所」となり、 外から訪れる人々にとっては「地域と出会う入口」となる。そして、何度も訪れ、関わり続ける中で、 田鶴浜の文化とコミュニティが次世代へと自然に受け継がれていく。そのような「再訪が重なり関係性が育つ拠点」となることを目指します。
本取り組みは、地域住民、専門家、研究機関、支援者など多様な主体の協働によって進めていきます。藤澤邸を核とした実践を通じて、災害からの復興と地域文化の継承を両立するモデルの構築に取り組みます。
代表理事 山口進(前・田鶴浜地区地域づくり協議会 会長、田鶴浜ライオンズクラブ 会長)
理事 高畑圭介(たつるはま未来会議 副会長、tasola)
理事 越岡滉周(真宗大谷派浄泉寺 若院)
理事 山口洋典(立命館大学共通教育推進機構 教授)
監事 一花英人(田鶴浜地区地域づくり協議会事務局長)
監事 山田一隆(東海大学文理融合学部 教授)
評議員 遠藤外数(建具の遠藤、田鶴浜町会、前・西町町内会 会長)
評議員 山本直樹(たつるはま未来会議 会長、塩谷建設七尾支店 支店長)
評議員 藤澤和吉(元・田鶴浜地区社会福祉協議会 会長)
評議員 宗本晋作(立命館大学理工学部建築都市デザイン学科 教授)
一般財団法人たつるはま地域文化財団 定款
第1章 総則
(名称)
第1条 本法人は、一般財団法人たつるはま地域文化財団(以下「本法人」という。)と称する。
(主たる事務所)
第2条 本法人は、主たる事務所を石川県七尾市に置く。
第2章 目的及び事業
(目的)
第3条 本法人は、田鶴浜地域をはじめとする地域における歴史的・文化的資産の保存及び活用を通じて、地域文化の継承、地域コミュニティの再生並びに学術研究及び人材育成の推進を図るとともに、交流の促進及び新たな関係性の創出を通じて持続可能な地域社会の形成に寄与することを目的とする。
(事業)
第4条 本法人は、前条の目的を達成するため、次の事業を行う。
(1)歴史的建造物(古民家を含む。)の保存、修復及び管理運営
(2)文化資産の活用並びに地域文化及び生活文化の継承に関する事業
(3)地域交流の促進、教育及び人材育成並びに交流拠点の運営
(4)ワークショップ、講座、展示その他の企画及び実施
(5)学術研究、調査研究及びフィールドワークの受入れ
(6)災害復興及び地域再生に資する調査研究及び実践的事業
(7)関係人口の創出及びネットワーク形成
(8)本法人の活動を支援する個人及び団体との連携・協力に関する事業
(9)前各号に附帯又は関連する一切の事業
第3章 資産及び会計
(基本財産)
第5条 本法人の目的である事業を行うために不可欠な財産は、理事会の決議を経て基本財産とする。
(基本財産への編入)
第6条 寄附その他の方法により取得した財産について、理事会及び評議員会が基本財産とすることを決議したものは、基本財産に編入することができる。
(基本財産の処分制限)
第7条 基本財産は、やむを得ない理由がある場合を除き、これを処分し、又は担保に供してはならない。
2 前項の規定にかかわらず、これを処分し、又は担保に供する場合には、理事会の決議及び評議員会の特別決議を経なければならない。
(財産の管理及び運用)
第8条 本法人の財産の管理及び運用は、代表理事が行うものとし、その方法は理事会の決議により定める。
(財産の拠出及びその価額)
第9条 当法人の設立に際して設立者が拠出する財産及びその価額は、次のとおりである。
設立者 山口洋典
現金 金300万円
(事業年度)
第10条 本法人の事業年度は、毎年4月1日に始まり翌年3月31日に終わる。
2 本法人の設立初年度の事業年度は、成立の日から当該年度の3月31日までとする。
第4章 評議員
(評議員の設置)
第11条 本法人に評議員3名以上を置く。
(評議員の選任及び解任)
第12条 評議員の選任及び解任は、評議員会の決議により行う。
(評議員の任期)
第13条 評議員の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時評議員会の終結の時までとする。
第5章 評議員会
(構成)
第14条 評議員会は、すべての評議員をもって構成する。
(権限)
第15条 評議員会は、次の事項について決議する。
(1)理事及び監事の選任及び解任
(2)定款の変更
(3)基本財産の処分の承認
(4)計算書類の承認
(5)残余財産の処分
(6)その他法令又はこの定款で定められた事項
(決議)
第16条 評議員会の決議は、議決権の過半数を有する評議員が出席し、その過半数をもって行う。
2 特別決議は、議決権の3分の2以上をもって行う。
第6章 役員
(役員の設置)
第17条 本法人に次の役員を置く。
(1)理事 3名以上
(2)監事 1名以上
(理事の職務及び権限)
第18条 理事は、理事会を構成し、法令及びこの定款の定めるところにより職務を執行する。
(代表理事)
第19条 理事の中から代表理事1名を理事会の決議により選定する。
(監事の職務)
第20条 監事は、理事の職務の執行を監査する。
(理事及び役員の任期)
第21条 理事及び監事の任期は2年とし、再任を妨げない。
(役員等の報酬)
第22条 理事、監事及び評議員は、無報酬とする。ただし、常勤の役員及び外部専門家として特に必要と認められる者については、評議員会の決議により報酬を支給することができる。
2 報酬の支給基準については、評議員会の決議により別に定める。
第7章 理事会
(構成)
第23条 理事会は、すべての理事をもって構成する。
(権限)
第24条 理事会は、次の職務を行う。
(1)業務執行の決定
(2)理事の職務の執行の監督
(3)代表理事の選定及び解職
第8章 非営利性及びガバナンスの確保
(剰余金の分配の禁止)
第25条 本法人は、剰余金の分配を行うことができない。
(特定の者への利益供与の禁止)
第26条 本法人は、理事、監事、評議員その他の特定の個人又は団体に対し、特別の利益を与えてはならない。
(利益相反の制限)
第27条 理事は、本法人と自己又は第三者との利益が相反する取引を行う場合には、理事会の承認を得なければならない。
(親族等の制限)
第28条 理事及び評議員のうち、各役員についてその親族その他特別の関係にある者の合計数は、当該役員総数の3分の1を超えてはならない。
(電磁的方法による手続)
第29条 本法人は、法令の定めるところにより、通知、承認、同意その他の手続について、書面に代えて電磁的方法により行うことができる。
(オンラインによる会議)
第30条 評議員会及び理事会は、出席者が音声又は映像により相互に意思疎通を図ることができる方法によって開催することができる。
第9章 情報公開等
(情報公開)
第31条 本法人は、事業報告及び計算書類等を適切に公開するよう努める。
(個人情報保護)
第32条 本法人は、個人情報の保護に関する法令を遵守する。
第10章 事務局
(事務局)
第33条 本法人の事務を処理するため、事務局を置く。
2 事務局に事務局長及び必要な職員を置く。
3 事務局長は代表理事が任免する。
第11章 定款の変更及び解散
(定款の変更)
第34条 本定款は、評議員会の特別決議により変更することができる。
(解散)
第35条 本法人は、法令で定められた事由により解散する。
(残余財産の帰属)
第36条 本法人が解散した場合における残余財産は、評議員会の決議を経て、国若しくは地方公共団体又は公益法人に贈与するものとする。
第12章 公告
(公告の方法)
第37条 本法人の公告は、電子公告により行う。
2 事故その他やむを得ない事由により電子公告による公告をすることができない場合は、官報に掲載する方法による。
附則
(設立時評議員)
第1条 本法人の設立時評議員は、次のとおりとする。
評議員 遠藤外数
評議員 山本直樹
評議員 藤澤和吉
評議員 宗本晋作
(設立時役員)
第2条 本法人の設立時理事及び設立時監事は、次のとおりとする。
理事 山口進
理事 高畑圭介
理事 越岡滉周
理事 山口洋典
監事 一花英人
監事 山田一隆
(最初の代表理事)
第3条 本法人の設立時代表理事は、次の者とする。
山口進
(設立初年度の事業年度)
第4条 本法人の設立初年度の事業年度は、第8条の規定にかかわらず、本法人の成立の日から2027年3月31日までとする。
※注:本ウェブサイトに掲載している定款は、個人情報保護の観点から、設立者の氏名・住所等の個人情報を削除した写しを掲載しています。なお、公証人による認証を受けた原本(電磁的記録)には、附則第5条に「設立者」として設立者の氏名及び住所が記載されています。当該電磁的記録は、2026年5月25日に七尾公証役場において認証されています。